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健康コラム
vol.42 ワーク・ライフ・バランス

保健師コラム

vol.42 ワーク・ライフ・バランス

大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から、時間外労働の上限規制が導入され、これまで以上に長時間労働対策が推進されています。これは、長時間労働による健康影響への対策だけではなく、仕事以外の社会生活の充実を図り、ワーク・ライフ・バランスを改善するという目的が背景にあります。本コラムでは、この「ワーク・ライフ・バランス」について改めて考えてみます。


ワーク・ライフ・バランスとは

だいぶ聞き慣れてきた「ワーク・ライフ・バランス」という言葉ですが、日本語に訳すと、「仕事と生活の調和」です。 2007年に内閣府が定めた「ワーク・ライフ・バランス憲章」によると、ワーク・ライフ・バランスが実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義されています。

図 ワーク・ライフ・バランスのイメージ

なぜいまワーク・ライフ・バランスなのか

仕事も私生活も大切ということは当たり前のことではありますが、国全体でワーク・ライフ・バランスを推進している理由には、働き方の変化をはじめとした様々な背景があります。

①働き方の二極化
企業間競争の激化や経済低迷、産業構造の変化による正社員以外の労働者の大幅な増加、労働時間の高止まり
②共働き世帯の増加と変わらない働き方・役割分担意識
女性の社会参加等による共働き世帯が増加した一方で、働き方や子育て支援などの社会基盤が従来のままであることや性別役割分業意識の残存
③仕事と生活の間で問題を抱える人の増加
経済的自立が難しい層や長時間労働による影響、仕事と子育ての両立の難しさ
④少子化対策や労働力確保が社会全体の課題に


人材の確保・育成・定着に重要なワーク・ライフ・バランス

若年者の離職状況に関して、興味深いデータがあります。
2018年に実施された「第2回若者の能力開発と職場への定着に関する調査(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)」で、正社員として勤務した経験がある20~33歳を対象に、「はじめての正社員勤務先を離職した理由」を尋ねたところ、つぎのような結果になりました。

この結果から、若い人において「持続可能な働き方」「自らのライフコースに見合う働き方」がいかに重視されているかを読み取ることができます。

さきほどの課題からもわかるように、ワーク・ライフ・バランスは、企業の活力や競争力の源泉である有能な人材の確保・育成・定着の可能性を高める「明日への投資」であり、経営戦略の重要な柱となっているわけです。


ワーク・ライフ・バランスとワーク・エンゲイジメント

それでは、この「ワーク・ライフ・バランス」について、企業としてどのような取組みを実践していけばいいのでしょうか。
長時間労働対策、労働条件の整備、子育て支援制度等の整備はもちろん重要ですが、
ここでもうひとつ、「ワーク・エンゲイジメント」という考えた方をご紹介したいと思います。

「ワーク・エンゲイジメント」とは、①仕事から活力を得ていきいきとしている(活力)、②仕事に誇りとやりがいを感じている(熱意)、③仕事に熱心に取り組んでいる(没頭)の3つが揃った状態で定義されるものです。

下の概念図からもわかるように、ワーク・エンゲイジメントというのはバーンアウト(燃え尽き)の対極に位置しており、仕事を次々にこなしていくという点ではワーカホリズム(仕事中毒)と同じ側にあるものの、仕事に対する意識が異なります。つまり、仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、いきいきと仕事をしている状態がワーク・エンゲイジメントといえます。

図 ワーク・エンゲイジメントと関連する概念(島津2019引用)

ワーク・エンゲイジメント向上策

「ワーク・エンゲイジメント」は、労働生産性の向上、顧客満足度の上昇、健康増進、新入社員の定着率や従業員の離職率低下と関連があることも明らかになっています。
それでは、「ワーク・エンゲイジメント」を高めるためにはどのような取組みが有効なのでしょうか。
令和元年度版 労働経済の分析(第2部第3章)から取組みのヒントをご紹介します。

労働者個人の認識に対する策は難しいかもしれませんが、人材育成や雇用管理に関する取組みはすぐに実践できるものもあるのではないでしょうか。

表 ワーク・エンゲイジメントと関連(正の相関)があったもの

最後に

ワーク・ライフ・バランスの「ワーク」の比重は人それぞれです。時間外労働は抑制しつつ、仕事のパフォーマンスの維持・向上のためには、この「ワーク」の質を落としてはなりません。そこで、「ワーク・エンゲイジメント」がキーワードとなるわけです。
従業員一人一人のワーク・ライフ・バランスを実現するためには、毎日いきいきと働くことができるか、ワーク・エンゲイジメントをいかに高められるかが、これからますます重要になってきています。

長い時間をかけて仕事をすることが美徳とされる時代は終わりました。
ぜひ、社内のワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組みをしていきましょう。
各種健康診断やストレスチェックの実施、その他従業員の健康づくりに関する対策等ぜひ弊社にご相談ください。


参考(2021年5月 閲覧)

内閣府男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/index.html
独立行政法人 労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2020/221.html
島津明人(2019) 産業保健心理学からみた持続可能な働き方
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/pdp/19p001.pdf
令和元年版 労働経済の分析
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/19/19-1.html

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