健康コラム
保健師コラム
vol.40 悩んでる人も多い「腰痛」
仕事内容の違いに関わらす、悩んでいる人も多い「腰痛」。成人の90%が一生に一度は経験すると言われています。
労働災害としても腰痛の占める割合は高く、労働環境を考えるうえで見逃せません。
職場や個人でどのような対策をとるべきか考えていきましょう。
腰痛は宿命?
人間は劇的な進化を遂げて直立2足歩行になり、両手を自由に使えるようになりました。
その代償として、重い上半身を骨盤や腰椎で支えなければならなくなり、腰椎にかかる負担が大きく、腰痛を引き起こしやすくなりました。いわば宿命ともいえますね。
また、人間の寿命が延びるにつれて、体の器官が弱まるのが早くなりました。圧迫骨折や脊柱管狭窄症などの加齢に伴う病気も増えています。
腰痛の原因
腰痛の原因として、画像や検査で診断できるものは全体の約15%程度と言われています。
検査をしても痛みの原因となる異常が特定できないものが約85%、突然激痛がくる「ぎっくり腰」も特定できないうちのひとつです。
特定ができないものは、生活環境や生活習慣、ストレスに大きく影響します。
・圧迫骨折
尻もちをついたり重いものを持ち上げたりした際、腰に強い負荷がかかり、腰の骨がつぶれた状態をいいます。骨の強度が低下していると特に引き起こしやすくなります。
・脊柱管狭窄症
背骨にある神経の通り道の「脊柱管」が、長年の負荷の積み重ねによって狭くなり、中を通る神経が圧迫されて腰痛や足のしびれなどの症状を引き起こします。
・ぎっくり腰
重いものを不自然な姿勢で持ったり、腰をひねったときに生じるもので、急な激しい痛みから「魔女の一撃」とも言われています。安静を保つことがなによりの治療です。
職場で起きる腰痛
腰痛は、休業4日以上の職業性疾病の6割を占める労働災害です。
職業別でみると、運輸交通業、小売業、保健福祉業が上位を占めています。
運転による長時間にわたる座位の保持や重量物の上げ下ろし、介護、看護の場面での発生が多いですが、労災認定までいかなくとも、PC作業が多いデスクワークでも腰痛は生じます。
そもそも座る姿勢は立っている姿勢よりも腰にかかる負担が大きいのです。
整形外科医のナッケムソン医師の論文では、立っているときに腰にかかる負担を100%とすると、座っている姿勢では140%、さらに座って前かがみになる姿勢では185%にもなります。立っているときは腹筋や背筋、両足に体重が分散されますが、座っている姿勢では腹筋が緩み、腰に体重が集中します。
また、仕事の不満や周囲のサポート不足、人間関係の悩みなどの精神的なストレスがきっかけとなり、身体的ストレス反応として、血流が悪くなり腰痛を悪化させることがあります。
痛みによって仕事がはかどらないだけでなく、精神的なストレスも抱えていては、仕事に集中することができず、生産性を落としてしまいます。
腰痛予防の自己管理とともに、職場全体の環境を整えることが大切です。
オフィスワーカーの腰痛対策
パソコンやタブレットの機器を扱う労働者の健康を守るガイドラインが、厚生労働省からも発表されています。
まずは、作業をする空間や環境の整備、作業姿勢や連続作業時間が適切かどうかをチェックしてみましょう。下の図はテレワークを行う時の作業環境について、厚生労働省が示したものです。事務所内でもこれは同じです。
企業主体で、できるだけ快適に仕事ができる環境を用意することも、従業員の健康を守るうえで重要なポイントです。
・ずっと同じ姿勢を続けない
長時間、座りっぱなしですと血液の循環が悪くなり、腰痛は悪化します。痛みは自律神経にも作用し、不眠やメンタル不調を引き起こす原因にもなります。
忙しい人ほど忘れがちですが、意識して席を立ち、軽い運動やストレッチをして、血流の悪い部分を開放しましょう。
・腰の筋肉の疲労をためないこと
座位でも前のめりや猫背の姿勢は骨盤が傾き、腰の筋肉疲労がたまりやすくなります。
椅子に深く腰掛け、おへその下4~5センチあたりを意識するように座ります。ここに力が入ることで、背中と腰の筋肉は力を抜くことができます。
・腰痛ストレッチ
こちらは厚生労働省が発表しているガイドラインに掲載されているストレッチ方法です。小休止やお昼休みなどで積極的に取り入れるようにしましょう。
・生活習慣の見直しを!
日々の生活はどうですか?忙しいことを理由にからだに無理をさせていないですか?
その日の疲れはその日のうちに解消させるのが一番です。
忙しいからこそ栄養のある食事をとり、湯舟につかり、十分な睡眠をとるようにしましょう。
「腰痛」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる (joa.or.jp)
職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (令和元年) (mhlw.go.jp)
職場における腰痛予防対策指針(厚生労働省)
こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト、ストレスと腰痛 (mhlw.go.jp)
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担当 小林保健師 小澤保健師
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