健康コラム
産業医コラム
vol.15 睡眠が健康に及ぼす影響とは?
人間が活動するうえで欠かすことのできない「睡眠」。睡眠には、心身の疲労を回復するだけでなく、記憶の整理をする、免疫力を上げる、脳の老廃物を除去する、などの働きがあります。睡眠不足や睡眠の質の悪化は生活習慣病のリスクになり、不眠がうつ病などの心の病に繋がることも分かってきました。そこで今回のコラムでは、睡眠をテーマにお話させていただきます。
夜ぐっすり眠るために不可欠なこと
そもそも人間には生まれつき体内時計が備わっており、それが24時間より少し長いため、毎日リセットする必要があると言われています。
リセットするには、朝起きたら最初に陽の光を浴びることです。リセットには2,500lx以上の光が必要とされていますが、太陽の光は曇りの日でも5,000~10,000lxはあるので十分と言えます。晴天の日は室内でも窓際であれば十分な採光が得られます。
また、朝20分程度日光を積極的に浴びることで、脳内にセロトニンの分泌が促され、それが夜眠るために必要なメラトニンの分泌に繋がります。つまり、毎朝起床時に太陽の光を浴びることが、夜ぐっすり眠るために不可欠なことなのです。
睡眠不足について
次に、睡眠不足についてですが、欧米に比べ日本人の睡眠時間は短いとの報告があり、特に就業年齢層で顕著に表れています。極端な睡眠不足状態が2日続くと作業効率が低下することが分かっています。時間外労働が長くなれば、削られるのは睡眠時間です。自分では気付かなくとも睡眠不足による注意力・集中力の低下から生産性の低下に繋がり、労働災害などの重大な事故の危険性を高めます。
「寝溜め」という言葉がありますが、実際は眠りを溜めることはできません。睡眠不足が続くと、短期間での回復は困難です。日曜に昼まで寝るような生活をしてしまうと、体内時計が狂い、夜は寝付けず、月曜の朝は所謂「時差ぼけ」の状態になってしまいます。
睡眠不足を補うには「昼寝」がお勧めです。昼食後、20~30分程度の昼寝は午後の作業効率アップに効果的です。
睡眠の質の悪化について
睡眠の質の悪化については、その原因の一つに「睡眠時無呼吸症候群」があります。睡眠中に呼吸が頻回に停止することで、血中の酸素濃度が低下し、交感神経の緊張や代謝異常で血管障害が進み、数年後には高血圧・脳血管障害・虚血心疾患などを引き起こすと考えられています。
治療せずに放置した場合、8年後の生存率が60%(つまり40%は死亡)という報告もあります。肥満の人に多い病態ではありますが、最近では痩せた人にも増えてきており注意が必要です。外来で簡易キットを用いた診断が可能なクリニックも増えており、もちろん継続して治療を受けることも可能ですので、不安がある人は早めの受診をお勧めします。
うつ病について
うつ病については、9割近くの人が何らかの不眠症状を伴うと言われています。早朝覚醒、中途覚醒、熟睡感の喪失などの睡眠障害は、うつ病のサインかもしれません。日中の抑うつ気分が続くようなら、躊躇わず専門医を受診しましょう。
良質かつ十分な睡眠の確保
睡眠不足、睡眠障害は確実に私たちの健康を蝕みます。平素から規則正しい生活を心掛け、良質かつ十分な睡眠の確保を目指しましょう。
参考
厚生労働省健康局『健康づくりのための睡眠指針2014(平成26年3月)』
厚生労働省健康情報サイト「e-ヘルスネット」内記事『睡眠と生活習慣病との深い関係』など
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